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手嶋ぶどう園、大海原にこぎ出す(再会)

鹿児島に来ている。

錦江湾横断遠泳大会に参加するためだ。

前回は一昨年で、今回で2回目。異なるメンバーでのエントリーだ。

桜島から磯海海岸までの直線4.2キロを4人一緒に泳ぎ切る。

無論、オープンウオーターなので海流あり、風有り、波、クラゲ有り。プールで泳ぐようにはいかないのだが、これがまた醍醐味でもあるのだ。

かなり人気の高い大会で、募集チーム数180にエントリーが260チームもあったそうだ。

出場チームが抽選で選ばれるため、実力の他に運も持ち合わせていないと参加できない。


前日に監督会議があり、これに出席しないと参加させてもらえないので、鹿児島で前泊。

夜は黒豚やら薩摩揚げ等の鹿児島の味覚で一杯。

メンバーのうち、初参加は2人だが、どちらも海での競技経験はあるので、リラックス気味だった。


当日は朝7時のフェリーで桜島に渡り、会場までは徒歩だ。


フェリーから港にわたっていると外は雨じゃーじゃー。

TS3H0393.jpg


うへ。


泳ぐんだから雨ぐらいいいじゃん、と思われるかもしれないが、雨だとやはり気が滅入る。さらに雷を伴うとかいうことになると、一気に事態は深刻化する。


雷の危険性が出たら、大会自体が中止される。延期はない。中止。


三年前の大会は、選手が砂浜に降りてこれから泳ぎだそうというその時に雷が鳴り始めたため、大会が中止となった。


その時にエントリーしていた友人がいた。


山本さん。

年の頃は60歳代半ば。


知り合ったのは8年ほど前。私が膝靱帯断裂再建手術のリハビリでやっとクロールが許可された頃だった。

その頃の私は、スイミング教室とか誰かの指導を受けてとかそういうことを一切せず、本屋で水泳の本を立ち読みしたりして、水泳の知識を得ていた。

なにぶん、ごつごつの原石からのスタートなので、ちょっとフォームを改善すると早く泳げるようになった。


ある日のこと。同じコースで泳いでいる初老の男性から声を掛けられた。

「少し前からここで水泳の練習をしているんですが、なかなかうまく泳げません。どうしたらいいんでしょう?」

えっと。あの、片手で水をかいている時、反対の手をまっすぐ伸ばして水を切ったらいいですよ。それから体を縦向きにしてもいいみたいです。

かなり怪しいがプルとローリングの基本だ。今ならともかく、その当時の私は人に教えるほどうまくはない。へたっぴーだ。正しいかそうでないかも分からない。だが、知っていることを話した。


ずーっとやってたらそのうちうまくなると思います。俺もうまくないけどがんばりましょう!


そう言ってへたくそな二人はプールの片隅で励まし合った。


それから3,4年して山本さんと再会する。


通勤路上にプールが乗ったのをきっかけにスイミング教室に入ると、山本さんも教室に入っていた。


山本さんはきれいなフォームのスイマーになっていた。適当に泳ぎ続けていた私よりもかなり速い。

山本さん、お久しぶり!すごく上手になりましたね~!すごい!


そういうと、ちょっと照れくさそうに言った。

「あなたのおかげなんですよ。あの時、あなたが励ましてくれたから続けてるんです。実はあの時、もう泳ぐのをやめようかと思っていたんですよ。ありがとう。」


じーん。


涙が出るくらいうれしかった。


そうか!山本さん!ずっとがんばってたんですね!うううう。


自分の何気ない一言が、思いがけずその人を支えた。


こんなうれしいことはない。

ちょっとの間、二人はまたまたプールの片隅で、再会と水泳を続けてきたことについて喜び合った。


その年の夏、山本さんは他の仲間達と錦江湾遠泳大会に出場することになった。

その大会が雷でそれこそ電撃中止となった3年前の大会である。

山本さんは前にも増して、一生懸命に練習をしていただけに、ショックは大きかったようで、それからプールに姿を現さなくなってしまった。



あれから3年。


山本さんが今年の錦江湾遠泳大会にエントリーし、当選したと風の噂で聞いた。


がんばれ!山本さん!

心で叫んだ。


山本さんが戻ってきてくれたようでうれしかった。




監督会議の会場。




会議が終わるとすぐ外に出て、山本さんを探した。



いた!山本さん!


声を掛けると、数年前より一回りやせた私に驚いてくれた。


明日はがんばりましょう!

私にとっては、特別な再々会である。



朝、スタート地点ではもう一つ再会があった。


会場で再び山本さんに挨拶しようと探していると、テントの中から私の名を呼ぶ声がする。

「テシマー!テシマー!」


え?

そうそうある名前じゃないので私の事には違いない。


逆光でよく見えない声の主を細目で見据えて近づいていく。


視神経から入ってくる画像と脳にあるデータの照合作業がフル回転で行なわれた。


あ。中川。


「どうしたんか!」


互いに同じ台詞を言った。


中学校、高校と同じだった友達、中川くん。


確か、今は福岡で税理士をしていたな。


「おまえ、テコンドーとかしよったき、まさか泳いだりはしないやろうけど、どう見てもおまえやき声を掛けて見たんたい」

テコンドーやってたら泳げないって法はないって。

最近になって近くのジムで走ったり泳いだりしていて、仲間を募ってエントリーしたそうだ。

同じ世代がこういう大会に出てくるのは大変うれしい。私は42栽。多少不甲斐ないかもしれないが、40栽代を代表して出ている。


タイムとか順位とかそういうのではない。

自分と対話しながら走り、泳ぎ、自転車をこぐ。何歳になってもここまではやれたんだ。前に進んでいくんだぞ。

そういう気概を持って、40歳代としてここに立っている。


思いがけない再会に驚き、そしてうれしさがこみ上げてきた。


180チーム、720人が一斉に泳ぎ始めるとさすがに死人が出るので第1から第11ウエーブまでグループ分けされ、5分間隔で15チームごとにスタートする。



我々「Team手嶋ぶどう園」は9時55分スタート。

TS3H0401.jpg



旅路は長いので、そんなに焦らない。



つづく
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職人みょうり

火曜日からずっとぶどうを売っている。

多くのお客様からご心配いただく。


「今年は天気が雨ばかりだから出来柄が悪いでしょう?」


確かにそういう話をよく耳にする。


そうですね、農業って大変です。


まあ、一粒。ご試食どうぞ。


召し上がっていただいてからの反応。


これがすこぶる楽しみ。





「まぁ!甘い」




どういうワケだか、うちのぶどう。悪くない。



うちのぶどうの形態が今年のような気象に強かったのか、必要な時に必要な気温や雨が間に合ったのか、真相はよくわからない。




ぶどうに聞いてみた。


ぶどうが色着きはじめる時期に新枝の伸びがピタリと止まった。

それから果実が熟す時期に葉に見られる虎葉、マグネシウム欠乏症がない。

枝の伸びが止まったのは、ぶどうが作った養分を全て果実に仕向けていたことを意味する。



この時期、枝がだらだらと伸びていると、色着きが遅れたり甘さの元になる糖の蓄えが増えない。




植物の生長は栄養生長と生殖生長とがあり、枝や葉、樹の生長が前者で花や種、果実にかかる生長が後者である。


果実の品質を高めようとすると、一時的に栄養生長を生殖生長に切り替える必要がある。



このあたりの技術が職人の技であり、今年はこの生長スイッチが守備よくいったのだ。


さらに虎葉が出なかったことは、これらの生長ステージがスイッチし、果実が完熟に達する時期を迎えた今でも葉が元気に働いていることを示している。



これらはぶどうからのメッセージ。





いい意味でお客様の期待を裏切る。


職人みょうりに尽きる夏。

十人十色




黒いブラックオリンピアという品種がウチの主力である。

090809_1533~02


紅いのや緑色のもある。


この時期だとレットマスカットという少し小粒のぶどう。

090809_1535~03


それから、翠峰(すいほう)という福岡県農業総合試験場(旧園芸研究所)が育種した品種。



090809_1529~01




並べていると「どれが美味しいんですか?」とよく聞かれる。



「どれも美味しいんです。」これは心の中でつぶやいて答える。


私が甘いと思うのは黒ですね。赤と緑は同じくらいです、と答える。



待てよ。



本当にそうだろうか。



自分ではそう思って疑わなかったのだが、客観的な視点が入っていないな。



これはいかん。



ブドウなど果実の甘さを計る時に糖度という数値が使われる。


糖度計という器具で計測する。

090809_1924~010001



果実から果汁を絞り、スコープをのぞき込むと中が白と青に別れ、その境目をゲージで読む。光が果汁を通る時、糖の含有により屈折率が変わる性質を利用したものだ。

090809_1925~01
こうして使う。



糖度とは糖の含有でそのまま%に置き換えることが出来る。




スイカの糖度だと12度(12%)くらい、梨だと13度(13%)ほど。


ぶどうは糖度17度以上で出荷可能だと言われている。


果実のおいしさはこの糖度と酸度のバランスであることは前にも書いた。



糖度が高く、適量の酸がそれを引き立てると、美味いぶどうである。



糖度は高い方がよい。



計ってみた。



ブラックオリンピア 19~20度 


お。やはり主力選手。


レットマスカット 18~19度


ブラックよりは少し落ちるが、これは他の品種にない香りがあり甘さにも上品さが漂う品種。


そして翠峰。



20度。


どの果実を計ってもほぼ20度だった。



あらま。



翠峰が一番甘い。



ごめんなさい、翠峰さん。あんたが一番。



明日からは翠峰が一番で、ブラック二番、レットが三番です、て言おう。



多少好みもあるが、どの品種にもヘビーなファンがおられる。




黒を基調に赤と緑の彩りを添えてみてはいかがですか?


いろんな味わい入っているといろいろ楽しめますよ。



組み合わせは十人十色。



お望み通りの味わい、十人十色。


秘密

梅雨も明けそうだ。夏だ。

夏はぶどうの季節である。


ぶどうで育ててもらった。



私、弟、妹。兄妹3人を大学までやってくれた。国公立の大学だったとはいえ、親にしてみればかなりの負担だったろう。ご丁寧に浪人も腹一杯したし・・。





通常、農家は生産したものを農協や市場に出荷し、出荷された農産物は中卸業者を経由して末端の小売店に送られ、消費者の手に届く。

手嶋ぶどう園が普通の農家と違うのは、この販売ルート。

市場を通さず、直売で直接お客様に買って頂く。

道端に直売小屋を建て、そこで販売している。

今でこそアチコチに農産物直売所が建てられているが、ウチの直売所が建ったのは今から35年前。

それからず~っと直売一筋。

そうすることで単価を安定させてきた。

そうでもしなければ、スネにかじり付いた穀潰3匹を養うことなどできやしないのである。


再生産価格。


モノには原価というものがある。それが出来るまでに係った物財費、運賃や労賃の合計を生産された数量の単位あたりに換算した金額。


これを割ってしまうと生業としては成り立たなくなり、農業は無論のことどんな産業でも経営は続けられない。


市場に出荷していると、この再生産価格を割ってしまう。なんとかしようと農業も資材費や労賃を下げ、効率化を図ることでコストを下げてきたがもう限界だ。


再生産価格で買っていただく、ということ。


どうしたらお客様が満足してくださるのか?これはぶどうに関わらず、サービス業全般に共通した永遠の課題である。


ただ満足していただくのではなく、”売り手が決めたお値段で”という条件が付く。




どこでもあるようなぶどうでは、そうそう売れるものではない。


手嶋ぶどう園が追求したのは、ぶどうの甘さ。


巨峰では限界がある。

より甘くなるブラックオリンピアという品種を栽培している。


見た目は巨峰と変わらないがこの品種。


かなりのじゃじゃ馬。

栽培にはそれなりの技術が必要である。



さらに甘い果実にするために、手嶋ぶどう園は考えた。

甘さを決めるのは果実の糖度と酸度のバランス。

糖の割合が一定以上高く、酸が低ければぶどうは甘い。


酸は昼と夜の温度差がある程度確保できれば下がってくる。

では、糖を上げるにはどうすればよいか。

植物体において糖をつくるのは葉っぱにある葉緑素。ここが光の力を借りて二酸化炭素と水から糖と酸素をつくりだす。

ならば、樹に葉っぱをいっぱい付けてどんどん光合成をさせれば美味しいぶどうができる、という理屈になる。

問題はその理屈をどう現場で展開するかである。


そういう栽培方法を必死で確立した父。

葉っぱをいっぱいにすることなど簡単じゃないか?そう思われるかもしれない。

ぶどうは棚で栽培する。

棚は2次元の平面である。

平面の上に平面的に葉を並べても並べられる葉の数は知れている。

通常の仕立てでは総葉面積は棚平面の2.5から3倍。


福岡県の指導機関でもこのへんの重なり具合が理想とされている。

その数では普通とかわりない。


4から4.5倍。

葉を平面に並べるのではなく、枝自体をコンパクトにし、通常平面に伸びる枝を縦向きに伸ばした。

そうすることで葉を平面ではなく立体的に展葉させ、あますところなく日光を取り込む。

重なりあっては日が当たらなくなるのだから意味がないだろうって?


こういう仕立てにすると葉は互いに申し合わせて斜めを向く。

平坦屋根と波状屋根。総表面積が大きいのは後者である。

強制的にその形へと押し込むのではなく、ぶどうがそうなりたいと願う形がそうだった。

ぶどうの声を聞き、ぶどうのやりたいようにさせる。

そして私達の仕事は「ぶどう達が果実を育むお手伝い」なのである。



これが手嶋ぶどう園の秘密である。


この秘密により、今の私がある。


秘密を暴露してお前ん家大丈夫なんか?って?


大丈夫。

これ、やろうとするとかなり大変だから。


汗をかき、お客様に満足していただく。


その汗こそが本当の秘密なのかもしれない。



我が家の掟

今週末には8月に突入する。


お盆もすぐにやってくる。



九州は8月13、14、15日はお盆といってお墓参りや初盆参りで人が動く。

ピンとこない方もおられるかも知れないが、九州では年末年始やゴールデンウィーク並のイベントなのである。

人々は真夏の先祖供養フィーバーに束の間の非日常を楽しむ。

初盆や帰省にはちょいと気の効いた手土産やご進物をさげていく。



「ぶどう下さい。」


うちにはぶどうしかない。


1キロ1600円。




安くはない。


一見のお客様にはウチの値段を聞いてびっくりして帰られる方もおられる。


無理もない。

スーパーならば一箱980円で売っている。






安くはないが、この価格にはワケがある。



大学生の頃、父親に聞いてみた。



「ウチの生活費が○×万円やろうが。それから経費が△○万円、お前の学費がいくらで今年は車を買い換えるからぜ~んぶで□◇×○万円よ。ここで出来るぶどうが☆○トン位やからさっきの金額をキログラムあたりに換算したらそのくらいの単価になろうが。」



なるほど。



わかりやすい。



そういうわけで、ぶどうの単価が形成されている。




今では我々穀潰3兄妹は独立し両親二人生活できるだけの経営に縮小してしまったが、やはり単価の設定はそのくらいになる。


単価が高いからといってボロもうけをしているわけではない。


まあ、夫婦二人がなんとか生活できるくらい。



この売価でそのレベルなのだから、これより流通経費がかかっているスーパー980円のぶどう農家の経営たるや、推して知るべし、なのである。



当たり前に農業をやっていても当たり前の生活が出来ない、そういう世の中になってしまった。



今日、社会全体でワーキングプアが蔓延しつつあるが、農業はずっと以前からこういう状況が続いている。




8月から9月の4、50日で年収を売り上げようというのだから忙しい。


需要はお盆に集中する。


何歳になろうが、どれだけ偉くなろうが、12、13、14、15日はぶどうを売る。


これが我が家の掟。



私は就農せずにサラリーマンになったが、あととりなんだからこの時期は諦めてぶどうを売る。

弟は歯科医になり、直売所のとなりに開業したが、やはりぶどうを売っている。

妹は去年結婚し、嫁いだ家に従うためぶどう売りは免れた。



掟だから仕方がない。



ふぅ。


今年もお盆がやってくる。
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プロフィール

てしまぶどう園

Author:てしまぶどう園
川崎町にあるちっちゃなぶどう園。
私はそこで生まれ育ちました。
手嶋ぶどう園では、ぶどうづくりをぶどうに任せることにしました。
私たちはぶどうの声を聞き、ぶどうがやりたいようにやるお手伝いをしています。
自然に任せて自然のなかで生きる。

そういう生き方ができたらいいなと思っています。

@@@@@@@@@@@@@@@@@@
手嶋ぶどう園
電話0947(72)3273
fax 0947(72)5454
〒827-0004
福岡県田川郡川崎町田原
田原交差点そばジョイフルの前
営業時間
朝8時30分~夕方6時
※17時以降ぶどうが無くなると閉店します。
遅くにご来店の際はご連絡下さい。
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